図書館情報メディア研究科パンフレット2016(日本語)
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学位論文(2013年度修了)14学位論文(2013年度修了) 本論文の目的は、メディアデータの加工・編集を誰でも行えるようにすることを狙いとした、エンドユーザのためのメディア処理部品の統合環境を構成する方法を明らかにすることである。学生時代に少しだけプログラミングの授業を履修したが、それ以降は全くプログラミングを行わないPC利用者は極めて多い。その人々が、デジタルカメラやスマートフォンなどの携帯型デジタル機器の普及に伴って大量のメディアデータを保有するようになり、加工や整理といったメディア処理をDIY(Do It Yourself)で行いたいという要求が高まっている。 本研究では、すでに多くのPC利用者が日常的に利用しているフォルダ管理という作業の経験と知識に着目し、それをプログラミングに活用することで、エンドユーザがプログラミング・スキルを習得する際の障壁を低減する。そのアーキテクチャとして、フォルダ管理を実現しているWebフォルダを拡張するフォルダ・プログラミング環境の提案を行い、その実現性をPOLDERの実装によって確認した(図1)。フォルダ・プログラミング環境の核となる考え方は、フォルダへのデータファイルのDropで処理が起動され、フォルダ名から対応する処理が動的に決定・実行され、結果がフォルダ内に保存されるという仕組みである。フォルダの入れ子構造に基づいて連鎖・並行・条件分岐などの制御構造を拡張することで基礎的なプログラミング環境を実現している。更に、フォルダに複数ファイルをDrag&Dropすることでファイルを一斉に処理する仕組みによって、大量のメディアデータへのメディア処理を簡便にしている。 博士(情報学)エンドユーザによるメディア処理のための部品統合環境の構成法に関する研究赤間 浩樹 提案する環境を用いた複数の利用者実験を行い、本研究で提案するフォルダ・プログラミング環境が、本研究で課題とする要件を十分満たす環境であることを明らかにした。また、比較実験を通して、これらの仕組みが効果的に利用者に訴求することを定量的に示した。提案する環境によって、日常的にPC は利用しているがプログラマとは言えないエンドユーザが、大量のメディアデータに対するメディア処理をDIYで行うことができるようになる。更に、DIYでプログラミングを始めたエンドユーザが、より高度なメディア処理を実行するために必要となる学習のなだらかな傾斜の実現に対して、本環境は、複数の新たな中間ステップを提供し支援することを論じた(図2)。 本論文は、これらの議論を通して、本研究が目的とするエンドユーザのためのメディア処理部品の統合環境の構成法として新規性と有用性を備えていることを明らかにしている。(研究指導担当教員 佐藤 哲司)図1 POLDERアーキテクチャ図2 新たな中間ステップ群となだらかなスキル成長

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