図書館情報メディアパンフ2017
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09学位論文(2016年度修了)について、相互運用性を有するLODによる構造化を情報の損失なく効率的に行う手法を示した。この手法によりLODを用いて構造化を行うことで、これまでWebで提供されてきた情報資源について外部の情報資源との相互接続が可能であることを示した。LODの適用にあたっての検討過程で得られたこのような知見は、これまでWeb上で蓄積されてきた各種の研究情報について、データとしての利便性を高めることに寄与できることが期待できる。 これまで研究機関から発信された研究情報は多数存在する。これらの研究情報について、適切な構造化や組織化を行うことで、LODをはじめとしたより相互運用性の高い記述形式への変換が容易になり、可視性と相互運用性を将来的に高めることができる。 また、研究機関に属する専門図書館が整備する研究情報基盤においては、従来から図書館で取り扱ってきた情報資源に限ることなく、研究に必要な様々な情報資源を利用者にとって使いやすいものとするという役割が求められる。本研究で得られた知見は、この役割の実現に寄与できるものと考える。(研究指導担当教員 杉本 重雄) 研究機関における情報資源の相互接続と連係によるアクセス支援に関する研究林賢紀 本研究は、研究機関が保有する情報資源の可視性と相互運用性をどのようにして高めるかを検討し、情報資源の相互接続と連係などアクセス支援のための課題解決に資することを目的として進めたものである。情報資源の記述の粒度を高めるなど構造化を行い、かつ様々な情報資源との相互接続が可能な研究情報基盤を構築することで、研究機関が公表している成果物について可視性を高め、これまでの知見を共有し新たな成果を生み出す基礎とするという研究成果の公開目的を最大化することができると考える。 リンクリゾルバの活用による文献データベース等の情報資源の相互接続がすでに行われている。そこで本研究では、情報資源の相互接続がリンクリゾルバにより行われている環境が利用者の情報資源の利用行動に与えた影響について分析し、リンクリゾルバの導入の効果を明らかにした。この結果、リンクリゾルバが利用者行動に介在することで、専門分野に特化しかつ相対的に閲覧回数の低い雑誌の可視性を高め利用に結びつける効果があることを示した。つまり、情報資源を相互に接続した結果、提供している情報資源の可視性が高まり利用が増加したといえる。このことは、研究機関の成果物から外部の情報資源に対しての接続だけでなく、逆に外部の情報資源から研究機関の成果物を接続した場合でも同様と考えられる。したがって、情報資源の相互接続が実現した場合には、研究機関の成果物についてより多くの利用を見込むことができる。このように、情報資源の相互接続について利用者に対する効果を把握した。 次いで、相互接続を前提とした情報資源の構造化について検討した。本研究では、すでにXMLにより構造化が行われた実データを使用し、構造化にあたって多くのコストや手間がかかるとされてきた「人が読む利用形態に適した構造」を持つ情報資源博士(情報学)学位論文(2016年度修了)今後の展望本論文の構成

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