図書館情報メディアパンフ2017
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研究室紹介 (情報循環)研究室紹介 (情報循環)34白井研究室資料、施設、災害から考える日本アーカイブズ学研究 「アーカイブズ学」という言葉を聞き慣れない人は多いでしょう。アーカイブズ学は、日本でまだ40年程度の蓄積しか持たない新しい学術研究分野です。白井研究室は、図書館情報学や博物館学、歴史学や社会学、海外の事例などに学びつつ、日本アーカイブズ学の体系的な構築を目指しています。 アーカイブズ学の研究対象は二つあります。一つは、役所や企業などの組織あるいは家族や個人が自分たちの活動の証として保存する文書、記録、刊行物その他の資料(アーカイブ資料)です。もう一つは、アーカイブ資料を保存し利活用に供する公文書館・文書館その他の施設(アーカイブ施設)とその機能です。アーカイブズ学の目的は、アーカイブ資料が残された理由や意義と特徴、アーカイブ施設の果たすべき役割や業務の具体的なあり方の調査研究を通じ、人類社会に価値ある資料や情報を後世へ伝えることにあります。行政文書と古文書―資料認識研究 日本のアーカイブ資料の代表は国や自治体が保管する近現代の行政文書です。また各地の旧家に伝えられてきた古文書の多くは、17世紀から19世紀末までの行政文書でした。日本アーカイブズ学は行政文書と古文書の統一的かつ連続的な理解や、資料群の構造的な把握に取り組んでいます。私たちのゼミでは古文書や行政文書の現地調査合宿を実施して実際の資料に即した調査研究を進めるとともに、学校や企業などのアーカイブ資料にも関心を広げています。文書館・公文書館―資料管理研究 世界中の国々でアーカイブ資料の保存利用体制が整備されていますが、日本は今なお遅れた現状です。日本国内のアーカイブ施設は文書館、公文書館、歴史資料館、情報館など多様な名前で呼ばれます。一つ一つの名前に理由があり、収蔵するアーカイブ資料の特性に応じて多様な運営形態をとっています。日本アーカイブズ学は各地のアーカイブ施設における資料管理や運営形態の調査分析を通じ、未来へ向けた記憶装置としての運営や機能のあり方を考察します。私たちも各地のアーカイブ施設を訪れて知見を深めています。被災資料と災害資料への取り組み 1995年の阪神・淡路大震災以降、日本では災害関係のアーカイブ資料が重要な研究対象になりました。その対象は被災地から救出・保全された被災資料と、災害にかかわって作成・収受され被災の実態と復旧の過程を記録する災害資料の二つに大別されます。 白井研究室は茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク(茨城史料ネット)に参加しています。2011年の東日本大震災にかかる被災資料や災害資料、2015年の関東・東北豪雨にかかる被災資料の救出・保全活動に従事し、これらの実践の中から研究成果が生まれつつあります。1953年作成の行政文書(白井研究室所蔵)五榜の掲示第二札(筑波大学図書館情報学図書館所蔵)東日本大震災の震災資料保全作業(2013年6月)

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