図書館情報メディアパンフ2017
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研究室紹介 (メディア創造)40研究室紹介 (メディア創造)藤澤研究室物理ベースコンピュータグラフィックス 海岸に打ち寄せる波や川の流れ、雲や噴煙、炎など自然界には非常に複雑な挙動を示す現象がたくさんあります。このような自然現象をクリエータの技量に依存することなしに、誰でも簡単にコンピュータグラフィックスアニメーションとして再現できる技術として、物理シミュレーションが近年注目を集めています。物理法則をコンピュータ内に実装することで水や空気などの流体から布やゴムのような弾性体、岩や建物のような剛体まで様々な物体の挙動とそれらの相互作用が自動的に計算され、人間の手では作り出せないようなリアルな映像を作り出すことが可能となります。我々の研究室ではこの物理シミュレーションの研究を主として行っており、その中で物理法則をいかにコンピュータに実装するか、どうやって計算速度を向上させてインタラクティブアプリケーションに応用するかといった研究を行っています。粒子法を用いた物体のシミュレーション マクロで見ると連続体である現実世界の物体を、コンピュータ内の離散空間で表現するために様々な方法が研究されています。その中でも粒子の集合で物体を離散化する粒子法は、粒子間に接続関係がないメッシュフリーな方法であり、様々な現象をシンプルな実装で再現できることから多くの研究で使われています。我々の研究室ではゴムのような弾性体からクリームのような粘塑性体、水のような流体まで多彩な物体を粒子法でシミュレーションする研究を行っています。大規模リアルタイムシミュレーション 洪水や雪崩など大規模な自然現象を物理シミュレーションで再現しようとしたときに問題となるのが計算時間です。一般的に1秒のアニメーションのためには30枚の画像を生成する必要があります。このとき1枚の画像生成に数分要していたのでは、たかが数秒のアニメーション生成に数時間かかることになります。満足のいく結果を得るためには何度もシミュレーションを繰り返す必要もあるため、計算コストをいかに落とすのかという点が重要となります。我々の研究室ではグラフィックス用のプロセッサを並列計算に用いることにより、洪水等の激しい流れを含むシーンで重要となる乱流をリアルタイムで計算する方法や高速な2次元シミュレーションとのハイブリッド手法により大規模なシーンでも非常に高速に計算が可能な方法などを研究しています。熱移動を伴う現象のシミュレーション 重力や風、人の手による外力など物体の形状や動きの変化に影響を及ぼす原因には様々なものがあります。その中でも我々は熱の移動による形状や動きの変化に注目して、それを再現できるシミュレーション手法について研究しています。熱の移動による形状変化の代表的なものとして氷が解ける氷解現象があげられます。氷解現象では物体内の熱の移動だけでなく、周囲の気流や氷が解けてできた水の流れ、太陽から熱が伝わってくるように放射線の形での熱移動と様々な現象を考慮する必要があります。我々の研究室ではこのような複雑な現象をすべて考慮した統一的な方法やそれをリアルタイム実行可能とする方法についても研究しています。

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