図書館情報メディアパンフ2017
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研究室紹介 (情報と社会)46研究室紹介 (情報と社会)呑海研究室図書館を中心とした知識情報基盤に関する研究超高齢社会と図書館:認知症にやさしい図書館 呑海研究室では、図書館を中心とする知識情報基盤に関して研究を行っています。知識情報基盤とは、あらゆる学習・教育・研究に必要な知識や情報を蓄積・共有・活用することによって、知識情報社会を支える社会的基盤です。長い歴史をもつ図書館について、歴史的時間軸および地理的空間軸から、知識情報基盤としての役割を探ります。 現在は、溝上研究室と連携しながら、「超高齢社会と図書館」をテーマとして研究しています。日本は、高齢化先進国です。『高齢社会白書』によると、総人口に占める65歳以上の人口の割合、つまり高齢化率は26.7%であり、「世界のどの国もこれまで経験したことのない高齢社会」を迎えています。しかし、世界に先駆けて高齢化が進んでいるにもかかわらず、高齢者を対象とする図書館サービスは進んでいるとは言い難いのが現状です。 高齢者を対象とするサービスはこれまで、障害者サービスの枠組みで語られる傾向にありました。しかしいうまでもなく、高齢者を対象とする図書館サービスがすべて障害者サービスに包含されるわけではありません。そこで呑海研究室では、ふたつのアプローチから、高齢者を対象とするサービスをとらえなおすことを試みています。 ひとつめは、「コミュニティ主導型サービス」です。コミュニティ主導型の図書館サービスとは、コミュニティのニーズを重視するとともに、サービスのプランニングから提供までをコミュニティのメンバーとともに実施するというサービス・モデルです。高齢者を対象とする図書館サービスに適応すると、高齢者の生きがい創出の場として図書館をとらえなおすという見方もできます。 ふたつめは、「認知症にやさしい図書館」です。日本の高齢者のうち認知症の人は15%、約462万人(2012年現在)であり、団塊の世代が75歳以上となる2025年には約700万人に増加するとされています。今後10年足らずのうちに、高齢者の実に約5人に1人が認知症であるという社会に突入することになります。認知症対策の国家戦略である「認知症施策推進総合戦略(通称、新オレンジプラン)」では、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」ことが基本的考え方とされています。すべての人が認知症を正しく理解し、認知症の人が自分らしく暮らすことのできる社会の実現に向けて、図書館だからこそできることを考えていきます。回想法キット認知症に関する本の処方箋プロジェクト

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