平成23年度 卒業研究指導方針

氏 名 松村 敦
所 属 知識 知識情報システム主専攻   図情 情報メディアシステム分野 
研究室 7D212
指導可能な研究領域
 情報の爆発的な増大にともない,大量の情報から有用な「知識」を獲得する技術がますます重要となっています.この問題に対して,
・Web, 学術文献,もの資料,絵本など様々な情報から知識を発掘し整理する手法
・人がどのような状況で何を必要としているか
といった人間の内面の分析と調査 という両側面からこの問題に取り組みます.これによって,人が知りたいこと(人に内在する要求)と世の中が知っていること(社会に遍在する知識)の両者を結ぶシステムをデザインします.

現在,主として予定している研究テーマは以下のとおりです.

・情報探索プロセスの管理
  情報探索は,1回の検索で終わるような単純なものではなく,キーワードや検索システムを変えたりしながら繰り返す試行錯誤のプロセスです.このような活動を支援するために,情報検索のプロセスを記録する方法,記録されたプロセスを管理し活用する方法などについて研究します.人が如何に情報検索というプロセスを行なっているかを明らかにし,それをもとにしてシステムを設計・実装します.

・絵本と子どもをつなぐ
  幼児期の子どもと絵本の接点は,主に大人からの読み聞かせです.そのため,どのような絵本を大人が選択するかは非常に重要な問題となります.そこで,絵本の読み聞かせに焦点をあてて,子どものために絵本を選ぶことが可能な支援手法を検討します.子どもが絵本に対して示す反応から子どもの好みを推定する方法,子どもの反応を利用した絵本の推薦システムの構築などについて研究します.また,図書館でのおはなし会のように集団に読み聞かせる場合の絵本の選択方法を,おはなし会の記録を利用して行なう方法を考えます.子どもは絵本というメディアに対してどのような関わり方をするのかについて,心理学による検討も視野にいれながら解明し,システムとして支援します.

・個人記録の蓄積,編集支援環境の構築
  ソーシャルサービスの発達により,さまざまな個人記録が蓄積されるようになってきています.それらは,ソーシャルブックマーク,twitter,tumblrなど,複数のサービスに分散して存在します.これらの大量の個人記録を自分の知識として有効活用するためには,それを文書として再構成するための編集技術が重要になります.さらに,それらを他の利用者と共有して活用する仕組みが必要になります.そこで,蓄積した個人記録情報の断片を整理し編集する方法,それらを共有して協調的に活用する仕組みの実現について研究します.人が情報をどのように整理し知識化し自分のものとしているのかについての深い理解を目指します.

・議論の収集,共有,可視化システム
  Web上には掲示板,Q&Aサイトなど大量の議論や意見情報が存在します.これらを理解するためには,似たような議論をまとめたり,対立意見を並べたりするなど,議論を把握するための作業が必要になります.このような作業を自動化し,システムとして実現することで,議論の把握がしやすくなります.この研究は,議論の内容を自然言語処理を活用して整理する部分と整理された議論を可視化し見やすく表示する部分とがあります.

  その他,上記にこだわらず学生との議論の中からテーマを設定します.参考までに現在&これまでの卒業研究を紹介します.
2010年度
・おはなし会の絵本選択支援のための読み聞かせ記録共有システム
・議論の理解と意見形成支援のための電子掲示板再構成システム
・履歴活用型文献検索支援システムの評価
・子どもの質問に着目した絵本の相互推薦環境
・意見情報の変遷を考慮した議論可視化システム
2009年度
・クエリの推移および検索結果の重複に着目したWeb検索支援システム
・読み聞かせ時の子どもの反応と好きな絵本の内容との関係性  〜子どものための絵本推薦システ ムの実現に向けて〜
・嫌いから好きを導く〜発見性を考慮した情報推薦手法〜
・複数画像の提示方法に着目した英単語学習法の評価
・情報の関係性に着目した文書作成支援システム
2008年度
・地図上の場所を介したコミュニケーションツールの開発
・擬人化コンテンツによる提示型インタフェース
・相互評価を支援するe-ポートフォリオシステムの研究
・記事数とトラックバック数の時系列変化に着目したブログ空間の分析
2007年度
・問題解決における経験知の利用と有効性の検証
・語の関連性に着目した辞書リーディングシステム
・読み聞かせ時の反応に着目した子どもの好みの取得方法に関する研究
研究指導の概要
 松村研究室は,宇陀研究室と共同で研究を行なっています.普段の活動は宇陀研究室と合同で行なうことが多くなります.
 テーマは学生との議論の中から検討して設定します.
 基本的には週1回のゼミを行ないます.それ以外に,月に1度程度の宇陀研究室との合同ゼミ,夏休みの集中ゼミ,合宿を予定しています.発表会前などは臨時に発表練習会を行ないますが,その頻度は学生によって違います.ゼミでは,学生からの報告,他の学生(大学院生含む)を交えた議論を行ないます.
研究をすすめる上で望ましい条件
・卒業研究を自分のこととして受け止められる人
・自分のことだけでなく,研究室内の他のメンバーへの援助を惜しまない人
受け入れの必須条件 
・面談すること 
選考方法
・11/5(金)までに面談を済ませる
・研究室を希望する場合は11/5(金)までに登録システムへ登録する
・11/5(金)の時点で定員を越えた場合は11/6(土)に内定を出す
・定員を越えていない場合は,引き続き面談,登録を受け付ける
・登録期間最終日11/12(金)正午に定員を越えていた場合は,面談内容から判断して選考する
その他
 面談の申し込みは電子メールでしてください.宛先,面談可能日などの詳細は,松村研Webページ http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~matsumur/ に掲載しますので,確認してください.研究内容の詳細,学生の活動の様子など研究室情報へのリンクも上記Webページにあります.
 宇陀・松村研究室では訪問期間中に研究室(7D240)を公開します.自由に訪問し,4年生や大学院生に研究室の雰囲気を聞いてください.
 また,知識情報システム主専攻のWebページは以下にあります.主専攻に関する情報はこちらへ掲載予定です. http://klis.tsukuba.ac.jp/system/
 知識情報システム実習(月曜5,6限)のあとに知識情報システム主専攻の先生方が順番に研究室紹介を行うので,興味のある人はぜひ参加してください.(松村研の紹介は9/27(月) 18:00〜)