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論文を書く時の注意点 の変更点

Top / 論文を書く時の注意点

*論文を書く時の注意点 [#wb4fb88d]

-大枠を述べてから徐々に細かい話に移りましょう (急降下してはいけません)。

--例:~
1. はじめに~
 司書資格の効果検証は図書館界にとって意義がある。そこで東京都の千代田図書館の職員10名にインタビューを試みたところ当日2名が欠席し...~
→ ×

-単に相関関係にあるだけの2つの事物を取り上げて,一方が他方の原因であるかのように論じてはいけません。これは見極めが難しいのですが,「〜すれば...になる」「〜なので...だ」などと書きたくなった時は慎重に考えましょう。
--例1:~
30代男性の身長と体重を調べたところ,体重が多い人ほど身長が高いことが分かった。従って大量の食事と睡眠によって体重を増加させれば身長は伸ばすことができる。→ ×~
--例2:~
デジタルレファレンスを行っている図書館は対面式レファレンスの正答率が高いことが分かった。従ってデジタルレファレンスを行うことでレファレンスの正答力を高めることができる。→ レファレンスに対する熱心さといったものが真の原因としてあり,これに起因してその図書館は(多くの困難の中で)デジタルレファレンスを実施し,かつ対面式の正答率も高いと考える方が自然です。

-そのサンプルが代表しているものを書きましょう。逆に言うとそのサンプルが代表していないものをあたかも代表しているかのように書いてはいけません。

--例1:~
都道府県立図書館を無作為に30館選んだところ〜ということが分かった。従って日本の都道府県立図書館は〜と言える。→ ○
--例2:~
市区町村立図書館を無作為に30館選んだところ〜ということが分かった。従って日本の市区町村立図書館は〜と言える。→ ○
--例3:~
都道府県立図書館を無作為に30館選び,市区町村立図書館を無作為に30館選び,これら60館を区別せずに調べたところ〜ということが分かった。従って日本の公立図書館は〜と言える。→ ×~

---日本の公立図書館を無作為に60館選んだなら良いですが,上記の方法で選んだ60館でこのようなことを言ってはいけません。日本に都道府県立図書館は約60館しか無いのに対し,市区町村立図書館は約3,000館もあります。従って上のやり方ではサンプルが都道府県立図書館に偏っているのです。そのサンプルに見出せた傾向は都道府県立図書館の実態に近く,市区町村立図書館の実態からは相対的に離れています。その意味で日本の公立図書館全般の傾向とは言えません。例えば上記60館の平均資料費は日本の公立図書館全体の平均資料費より明らかに高くなるはずです。

-ある対象を調査して傾向を述べる時は,その対象以外も調査して同じ傾向にないことを確認しましょう。例えば「本のベストセラーに特徴的な傾向を調べました。その結果,ベストセラーの多くは紙で出来ていることが分かりました」などと言われてもあまりおもしろくありません。ベストセラーに特徴的な傾向を述べるときは,ベストセラーではない本も調べ,ベストセラーにしか見られない傾向を述べないといけません。

--「図書館の非正規職員は正規職員に比べて賃金が低い」などと述べる場合も,他の職種における正規・非正規職員の賃金を調べた方が良いです。もし他の職種でも同様の傾向が見られたら,低い賃金は図書館における非正規職員の傾向というより非正規職員全体の傾向に過ぎないということになります。さらに他の職種ではもっと賃金格差が大きかったなら「図書館界はまだマシ」あるいは「どういう前提で低いと言っているのか」と反論される可能性が出てきます。

-自分が選んだ選択肢(調査手法やデータなど)については,なぜそれを選んだのか理由を書きましょう。例えばアンケート調査という手法を選んだのはなぜかといった説明を書いて下さい。下記も参照。

-自分が選んだ選択肢(調査手法やデータなど)だけでなく,他に取り得た選択肢をすべて列挙し,「なぜ他のは採用しなかったのか」も述べましょう。これはとても大事です。視野狭窄になるのを防げますし,自分の選択の妥当性をより強く主張することができます。

-他に取り得た選択肢は,論文中のキーワードを1つ1つ抜き出し「一口に〜と言っても様々なタイプがある。例えば...」の「〜」にキーワードをはめ込んで考えてみると良いです。そこで浮かんだ下位語のうち,研究で選ばなかったものについては「なぜ選ばなかったのか」を書きましょう。

--例:「一口にレファレンスサービスと言っても様々なタイプがある。例えば対面式のレファレンスといわゆるデジタルレファレンス(DRS)などがある。本研究ではDRSは取り上げない。理由は...」

-上記の方法では論文中のキーワードの下位語しか浮かばないことになります。キーワードの上位語を考えて,それを上の「〜」に入れてみると兄弟語が浮かぶかもしれません(そのような語の提示を自動的に行ってくれる論文執筆支援システムを誰か作って欲しいのですが...)

--例:「一口に図書館における情報サービスと言っても様々なタイプがある。例えばレファレンスサービス,児童サービス...」

-ある集合Aと集合Bそれぞれの平均値を調べ,前者の方が後者より高いなどと言う場合は,単純に平均値だけを見るのではなく分散なども調べ,t検定を行って統計的な有意差を調べましょう。即ち単に「高い」ではなく「統計的に有意に高い」などと言うようにしましょう。例えば成績上位校10校の平均蔵書数が成績下位校10校の平均蔵書数より高かったとしても,もしかしたらそれは成績上位校の1校が異常に多くの蔵書を持っていたからに過ぎないかもしれません。t検定を行えば,そのような外れ値によるのではなく全体として高い(あるいは全体としては差がない)と言うことができます。

-A → B (AならばBである)という調査結果からB → A (BならばAである)という結論を書いてはいけません。例えば「プロ野球選手は全員男性であった」という調査結果から「男性は全員プロ野球選手である」という結論を書いてはいけません。このように分かりやすい例だと「そんなバカな」と思うかもしれませんが,締切に追われて睡眠時間も減るとうっかり間違えることがあります。例えば「司書資格を持つ図書館員の多くは選書に携わっている」という調査結果から「選書は多くの場合司書資格を持つ図書館員によって行われている」などと書いてしまったりします。

-ある集合のある属性に関する平均がXであった時,その集合の部分集合の平均もXであると書いてはいけません。例えば「男女500名ずつ計1,000名の平均身長を調べたところ165cmであった。従って男性の平均身長は165cmである」などと書いてはいけません。これも「そんなバカな」と思うかもしれませんが,込み入った対象を相手に,疲れた状態で書いているとやってしまいます。例えば「司書資格を持たない非正規職員250名の平均時給は1,000円であった。一方,正規職員180名の平均時給は3,000円であった。これら正規職員180名のうち司書資格を持たない職員は160名にのぼった。従って司書資格を持たない正規職員の平均時給は非正規職員のそれより高いと言える」などと書いてはいけません。ここの平均時給3,000円は180名に関するものです。司書資格を持たない160名の時給はもしかしたらものすごく低いかもしれません。例えば160名の時給は500円で残り20名の時給が23,000円だったら180名全体の時給は3,000円になります。500円 < 1,000円ですから上の結論は間違いになります。

-これは論文執筆時というよりは調査計画段階で注意すべきことですが,何かを取り上げる時はその中身も考慮した方が良いです。例えば「テレビを観る時間が人格形成にどのような影響を及ぼすか?」などを調べたい時は,全体の時間だけでなく観るテレビの内容も考慮に入れないといけません。ドラマ,お笑い,ニュース,教育系をそれぞれ何分観たかなどを考えるのです。「指定管理者制度を導入したら貸出冊数が増えた」などという場合も,どのような主題(NDC等)の図書の貸出冊数が増えたのかを調べた方が当然良いです。

-「また」という語でズラズラ話を並べないようにしましょう。読んでいる方はいつまで続くのかと苦痛になってきます。「そして」なども避けましょう。

-上と重なりますが,「以下の3つがある。即ち(1)...(2)...(3)...である。」などと簡単に見出しを付け,その後(1)(2)(3)を見出しと共に詳述していくスタイルがお勧めです。

--例:...以下では(1)法律による規定,(2)ポルノグラフィが持つ文化財・研究資料としての価値,(3)個別意見に対する反論,の構成でその根拠を述べる。まず
(1)の法律による規定だが...

-論文中の用語に対しては定義を書きましょう。定義について完璧にコンセンサスが得られている用語などはほとんど無いので,定義を示さないと叩かれる可能性が高いです。

--例:公共図書館とは? レファレンスサービスとは?

-「〜だ。」→「〜である。」,「〜じゃない」→「〜ではない」,「とても」→「非常に」,「のに」→「にもかかわらず」,「いて」→「おり」,「もしかしたら〜」→「あるいは〜」「〜という可能性も考えられる。」など,論文らしい表現を用いましょう。

-年ではない数字が4桁以上続く時は3桁目,6桁目にカンマを入れましょう。

--例:3025館 → 3,025館

-数字に半角を使うか全角を使うか,自分のルールを作って一貫させましょう。同じ論文内に「2つ」と「2つ」などを混在させないようにしましょう。

-「,」と「、」,「。」と「.」を混在させないようにしましょう。これらが混在していると「この部分は他の人が書いたのか?」「Webからコピペしたのか?」と思われてしまいます。辻からの論文修正案をそのまま採用して下さる時は注意して下さい(その人のスタイルに合ったものを送るようにしていますが)。

-「こと」「事」,「および」「及び」,「もとに」「基に」あたりは混在しやすいので自分のルールを作って一貫させましょう。上記の区切り記号などとともに,たまに検索をかけて統一しておくといいと思います。

-インデントの深さに気をつけましょう。下位レベルの話は上位レベルよりインデントが浅くなってはいけません(左側に書いてはいけません)。

--例:~
~
  (1) 本研究が用いるデータ~
 a) 国立国会図書館の書誌情報~
 b) 公共図書館の所蔵情報         → ×~
 c) Amazonのランキング情報~
~
  (1) 本研究が用いるデータ~
    a) 国立国会図書館の書誌情報~
    b) 公共図書館の所蔵情報      → ○~
    c) Amazonのランキング情報~
~
-論文の場合,フォントはゴシックより明朝体が好きです。

-Wordで書く場合,引用文献を番号の形で本文中に示す時は(例えば「...と述べてい
る[5][6]。」など),「参考資料」→「文末脚注の挿入」とやって番号を入れましょう。番号を手入力するのはやめましょう。後から文献を追加する際,番号の変更が大変になります。

-論文のファイル名にはバージョン番号を付け,少しでも更新したらバージョンを上げましょう(複数のパソコンを使っている人は旧版による新版の上書きを避けるため必ずやった方がいいです)。その際,同一ファイルの名前を変更するのではなく,Windowsだったら「名前を付けて保存」で新たなファイルとしてバージョンを上げ,旧版はバックアップとしてとっておきましょう。またファイルが名前順に表示されても最新版が一番端に表示されるよう,ver.9の次はver.10ではなく(そうするとver.1とver.2の間に表示されてしまいます),ver.aなどとし,ver.zまで増やしていくのがお勧めです。

-卒論生の方へ:着手・中間・最終発表会の配付資料を印刷する時は辻を呼んで下さい。一部一部プリンタで出力しホチキスで留めるとなるとすごく手間がかかるはずです。

**番外編:願書等を書くときの注意点 [#o3efc5fb]
-業績は貪欲にギラギラとアピールしましょう。

**参考になるWebページ等 [#jf30ae44]
-[[松尾ぐみの論文の書き方:http://ymatsuo.com/japanese/ronbun_eng.html]]