CGによる手話学習システム

長島玲子
手話は聾者(聴覚障害者)のコミュニケーションの手段として利用されており、近年一般的にも 注目され始め、高校生や大学生などの健聴者が進んで手話学習に参加し、サークル活動も各地で 広がっている。手話学習の方法としては図書、ビデオ、講習会などが挙げられるが、図書からで は実際の動作をつかむことは難しく、ビデオではインタラクティブな操作はできない。手話を確 実に学ぶことができるのは講習会であるが、時間と場所を拘束される。そこで最近ではコンピュ ータを用いた手話学習システムに関するいろいろな研究がなされている。動画を用いることによ り、手話学習初心者でも容易に理解することができ、コンピュータを用いることで時間の制約を 受けることなく、インタラクティブに高度な学習が可能になる。
しかし、それらの研究は、その国独自の手話に限られており、複数の国の手話を扱うCGに よる同様のシステムはまだ開発されていない。聾者の手話は、一般の音声言語と同じように国に よってそれぞれ異なる。手話の多くの部分はその国独自の規約性を持っているため、異なる国の 聾者同士が自分の国の手話だけで国際交流することは必ずしも容易にできるわけではない。 それらのことから、本システムでは、入力した単語に対応する手話の動作を3次元CGで表 示させることで手話表現を分かりやすく提供すること、および、複数の国の手話を対象とするこ とで、他の国の手話を学びたい聾者を支援することを目指した。また、手話学習初心者に対する 手話単語の学習支援も目的とし開発を進めた。対応する手話は、日本の手話、使用人口の多いア メリカの手話、イギリスの手話、聾者の国際会議での使用を目的とした国際共通手話の4つとし た。
本システムを開発する際には、C言語と3次元グラフィックスの標準ライブラリである OpenGLを使用した。主な機能としては、手話表示機能、手話追加機能、手話学習機能がある。 手話表示機能は、入力した単語と選択した国の手話に対応する手話を3次元CGでアニメーショ ン表示する。手話追加機能は、辞書ファイルにない手話単語と手話動作の追加をユーザーが簡単 な操作でデータ入力できるようにした機能である。手話学習機能は、表示された手話動作が意味 するものをユーザーが問題の選択肢の中から選び、それに対して採点を行う機能である。表示中 の手話アニメーションに対しては、拡大縮小、手話速度変更、再生、視点変更が任意で行えるよ うになっている。
本システムは、CG人形が人間の容姿にはほど遠かったり、外国語での入力には対応していな いなどというように、改良の余地がまだまだ有る。又、現時点では単語のみにしか対応していな いことから将来的には、文章入力対応にしたり、音声認識もシステムに取り入れることで、手話 を知らない人と聾者とのコミュニケーションが可能になったり、リアルタイムでの手話翻訳が可 能になったり、というようにさまざまな用途で利用できるシステムになることが期待される。