OpenGLによる物性物理のための汎用グラフィックスツール

田崎 景子
1970年代まではコンピュータに何かをさせるには、必ずといっていいほどプログラ ムを書かなければならなかった。そのためコンピュータを利用する人は限られた人のみで あったが、現在ではプログラムを書かなくても様々な事がコンピュータを利用して行える ようになってきた。例えば、使いやすい便利なグラフィックスツールが多々出現したこと により、コンピュータグラフィックスは誰でも手軽に利用できる身近な存在になった。だ が一般的な汎用グラフィックスツールを用いてグラフを描こうとする場合、必ずしもユー ザが望んでいるようなグラフを作成できないことがある。特に物性物理学においては独自 の表現方法が用いられることがあるので、これらの汎用ツールを使わずに研究者自身がグ ラフィックスを描くためのソースプログラムを作成している場合も多い。これでは研究者 に研究以外の労力と時間をかけさせているといえるだろう。そこで本研究では、グラフィ ックスライブラリのOpenGLを用いて物性物理学において利用されるグラフの多くをカバ ーできるようなグラフィックスツールを作成することにより、物性物理学研究者のグラフ 作成のための労力軽減を図ることを目的とした。
一般に汎用グラフィックスツールと考えられるものはどのようなものか、汎用グラフィ ックスツールで描画できるものと描画できないものはどのようなものか、実際に物理学で 用いられているグラフとはどのようなものがあるかを調査することから始めた。まず、汎 用グラフィックスツールについてだが、一般に広く知れわたっているツールについて調査 した。次に実際に物理学で用いられているグラフにはどのようなものがあるのかを主に論 文などから調査した。その中に物性物理学独特だと思われる特徴をもったグラフをいくつ か見い出した。これらの物性物理学独特だと思われるグラフを汎用ツールで描画するにあ たって、汎用ツールでは目的に応じたグラフを描画できるのか、もし描画できるとしても その際にどの程度の時間と手間が必要かを調査した。これらの結果を踏まえて、汎用ツー ルでは描画が困難だと思われる物理学独特のグラフを描くためのツールを作成することに した。
その結果ある程度、物性物理学に特化したグラフでも容易に描画することができる様に なった。しかし、現段階ではグラフの種類、オプションの数が不足しているため、ユーザ が望むようなグラフを描くということが必ずしも満足なものとはなっていない。また2次 元グラフィックスツールを作成するために時間を割いてしまい3次元グラフィックスツー ルの製作に取り掛かれなかったことが残念である。他にもいろいろ不備な点があるが、ユ ーザサイドの要望を随時取り入れながら改良を重ねれば使いやすく有用なシステムとなる にちがいない。