3次元CGによる折り紙

戸塚麻子
日本で昔から伝えられている子どもの遊びとして、「折り紙」というものがある。折 り紙は、言葉のいらないコミュニケーションの道具として、また、親子・家族などふれ あいのための遊びとなっている。それに加え最近では、折り紙の効果として、ストレス の解消、老人・障害者のリハビリテーション効果の他に、指先や頭脳が刺激を受けて、 幼児期の心と身体の発達を促進したり、想像力を高める能力開発にも役立つということ で、折り紙が注目を集めている。これらも含め、この手軽で、どこでも、だれでもでき る折り紙は、年齢にとらわれることなく、遊びや趣味として幅広く親しまれている。 折り紙を学ぶ方法としては、教本から又は人から学ぶ方法などがある。しかし、教本 の場合、平面上に描かれた図であるため実際の動きを見ることができないことに加え、 一方向からしか見ることができないという欠点がある。人から教えてもらう場合には、 時間的制約を受けるという欠点を持つ。折り紙の折る手順等を立体CGで表現すること で、実際に紙が折れていく過程を表現するシステムなら、人から直接教えてもらう方法 に近い形で、時間的制約を受けずに折り紙を習得できるようになるため、従来の方法の 欠点をなくすことができる。そこで、近年の家庭におけるコンピュータの普及を踏まえ、 また折り紙の持つ数学的要素を利用して、コンピュータを用いて折り紙の折り方を立体 的に3次元CGで表現することで、折り紙を学ぶことができるシステムを作成すること にした。
本システムは、3次元コンピュータグラフィックスの標準的なライブラリである OpenGLを用いてシステムを作成した。折り紙の初心者が折り紙を学ぶのに、直接人 から教えてもらう方法に近い形で、折り紙を学べることを目的としている。初期状態と して、ディスプレイ上に示した正方形を1枚の折り紙とみなし、それを折っていく。操 作は、マウス操作でボタンを押すことにより、すでに折り方の決まっている折り紙(折 り紙の本に載っているもの)を少しずつ自動的に折っていったり、逆に展開していくと いうものである。3次元CGで表現することで、折り紙の連続的な変化を任意の方向か ら眺めることができるようになっている。方法としては、折ることによって移動する頂 点の軌跡の座標を細かく計算し、実際に折れているように頂点を移動させている。
今後の課題としては、本システムでは紙の厚さを考えずに作成したが、折り紙の厚さ も考慮にいれたシステムにすることなどが考えられる。改善すべき問題点や今後の課題 とすることは数多く残っているが、折り紙の折り方や折るものの種類を増やしていくこ とで、システムを充実させることができれば、より実用性の高いシステムになるのでは ないかと考えられる。