3次元CGによる図書デザインシミュレーション


栗原  彩 
一般に、本は次のような工程を経て製作される。企画から編集は、本を製作 する本人や編集者が中心となって行なわれ、本の内容やレイアウトが完成され る。次に印刷の元となる版下制作を行ない、そして校正では、制作した版下に 間違いがないかを見る。校正での直しには限界があり、場合によっては製版な どのやり直しになる。この場合、時間的問題や費用にも関係してくるので、入 稿の段階で元原稿をよくチェックしておくことが必要である。そして実際に印 刷、製本を行ない、一冊の本が完成する。
一冊の本を製作する際に必要となるデータは、本の内容以外に全体の大きさ、 構成、装丁や製本の方法、用紙の大きさなどがある。また本を構成するものと しては、カバー、帯、表紙、見返しなどのデザインや形状がある。さらに用紙 や表紙の材質などを挙げると、構成パターンは数え切れない程存在する。この ように構成を決定付ける要素は多くあり、それぞれに対して、その内容に合っ た形状やデザインを考えなければならない。本の表紙や装丁は、まさにその本 の顔であり、いかに惹きつけるものにするか、様々な工夫が必要になる。しか し実際の製作時の構想段階では、一つずつ平面的なデザインとして制作を行な うので、本の形としての完成形のイメージをつかむ事は必ずしも容易ではない。 そこで本研究では、表紙や装丁の構想段階において、3次元CGによって本 のデザインを試作する。これにより、利用者に本の全体的な完成イメージを掴 ませ、より構想イメージに近い形で製本を仕上げることができるようにする。 そして現在の工程と比較して、変更を少なくさせ、時間とコストの削減につな げることを目的とする。
本システムでは、初めに本の大きさなどの設定入力を行ない、そのデータに よって本の形状が決定される。そのデータを基にオブジェクトを描画し、デザ インをテクスチャとして貼り付け、メインウィンドウに表示する。そのメイン ウィンドウの本に対して各種の操作を行なうことができるようにした。ただし、 テクスチャ・マッピングを施している事により、機器によっては処理速度が落 ちるという問題点がある。さらにテクスチャ画像と、それを出力した色とで、 多少の違いが発生するといった、カラーマッチングの問題点が残っている。こ のような問題を解決するための、カラーマネージメントの研究が様々なところ で行なわれている。本システムを実用化に向けていくためには、これらの技術 も考慮する必要があると思われる。