3次元CGによるユニット折り紙シミュレーション


田中亜紀子
日本の伝統的な遊びの一つに、「折り紙」がある。折り紙は「古くさい」「子供」の遊 びと見なされがちであるが、現在では、"origami"の表記で世界各国において親しまれ ている国際的な遊びとなっている。国際的な遊びとなった"origami"は、従来からあっ た正方形の紙から作る作品ばかりでなく、紙幣のような長方形から折る折り紙や、正三 角形の紙から折る折り紙などが新しく創作され、また、折鶴の一般化問題や展開図から 完成品を復元する問題のような幾何学の領域との融合など「遊び」の領域すら超えつつ ある。
そんな中で、比較的近年になってから創作された折り紙作品の一分野に「ユニット折 り紙」と呼ばれる作品群がある。ユニット折り紙においては、一枚の紙から一つの部品 を作り、複数の部品を組み合わせて完成品とする。つまり、紙を折るだけでなく部品同 士を「組む」という作業が必要となる。このユニット折り紙を学ぶための教本も存在し ているが、組む作業の手順を紙面上でわかりやすく説明することに成功しているとは言 い難い。
本研究では、この組む作業を3次元コンピュータグラフィックスで表現することで作 品制作の手助けをし、配色のシミュレーションも行えるシステムを構築した。システム で使用した言語はC言語と3次元コンピュータグラフィックスの標準的なライブラリ 関数であるOpenGLである。ユーザはメニュー画面にある完成品を選択することで、 その作品が完成していく様子を自由に回転させながら見たり、配色を変更したりするこ とができる。
 現状では、シミュレーションは最初に用意してある数種類のユニット折り紙しか表示 することが出来ず、ユーザが自由に組み立てられるようになっていない。また、すでに 準備されている作品以外の物を作ろうとするとデータファイルを新たに準備しなけれ ばならず、非常に煩雑な計算と頂点確認作業が必要となる。これを解消するためには、 ユニットの頂点情報と個数から動的に完成作品の頂点をはじき出すようなプログラム が必要となるだろう。実際にこのシステムを利用して折り紙を作ることを考えると、紙 を折る部分のシミュレーションもあった方が良い。ユニットに厚みを持たせていないた め表示が正確ではなかったり、組む作業が一瞬で終了してしまうという問題もある。こ れらの問題点や課題が解決されれば、より利便性の高いシミュレーションシステムとな ることだろう。