Java3Dを用いた図書館設計支援システム

      

稲岡 和生

 

 今日、ハードウェアの進化によりコンピュータグラフィックス(以下、CGとする)は、より複雑で、かつリアリティあふれるものに発展しており、映画やCMといった動画メディアでは当たり前のように使われている。CGは実際には実現できないような映像を作成したり、操作したり、また空想の世界を可視化したりできるため、各種シミュレーションに利用されている。

 3次元CGを使って行うシミュレーションに建築設計がある。シミュレーションにより実際に建ててからでないとわからない建物の利便性や雰囲気をあらかじめ掴むことができる。建築設計のシステムとしては2次元の設計図を3次元化するものや、3次元空間で部品を配置し設計するものなど多様な形態がある。しかし、既存のシステムはどれも、PCを使い慣れない者にとって操作が煩雑で、設計の初心者には利用方法が難しく、上級者にとっても少し試してみたいという感覚では設計できないという問題がある。

 そこで本研究では、2次元による図書館設計機能、3次元空間上での簡易的な建築物内部の表示とウォークスルー機能を持つ図書館設計支援システムを構築した。ここで利用対象は、PC操作に不慣れな図書館設計者、設計の知識のない者等を想定した。本システムにおいて設計の対象をすべての建築物とするのは設計の知識がないことや時間の制約等の理由から不可能であると考え、配置する部品を限定するため図書館にした。利用者は2次元画面で簡単に図書館内部を設計し、それを3次元化した仮想空間をウォークスルーできるようになっている。

 本システムは、3次元グラフィックスアプリケーションやアプレットを作成するためのアプリケーションプログラミングインターフェイス(以下、APIとする)である、Java3Dを用いて構築した。その理由としてはJava3Dにより実現する技術に加え、Java3DはJavaの拡張APIであるため、一度作成すればどのプラットフォームでも実行でき、環境設定が容易なこと、インターネットとの結びつきが強くシステムをネットワーク上で公開できること、利用者にわかりやすいGUIを作成可能なこと等のJavaの特長が得られるからである。

 本研究の結果として、

(1) 操作方法を簡単に覚えられ、PC操作の不慣れな者も利用できる。

(2) 利用者は設計の知識がなくても設計できる。

(3) 3次元化された空間を歩き回り、シミュレーションできる。

という成果が得られた。今後の課題としては、

(1) 本システム用のモデリングツールを開発し、設置する部品を利用者がカスタマイズできるようにする。

(2) 既存のシステムとの互換性をさらに向上させる。

(3) 図書館に限定せず広範な設計に応用する。

といったことが挙げられる。