パッケージデザイン開発支援システムの作成

 

中村友子

 

現在,多くの類似商品の中からひとつの商品を選ぶという場合,パッケージデザインは重要な判断基準となりうる.同一の中身のものであっても容器の違いにより売れ行きが大きく左右されることが多い.そのため,商品開発においては商品そのものと共にパッケージデザインにもより工夫を凝らす必要がある.

一般的なパッケージデザイン開発ではデザインコンセプトを設定し,条件に合致するように包装形態,使用材料,機能などを決定する.次にそれに基づいた容器デザインとイラスト,写真,ロゴなどグラフィク的な表面デザインについてアイデア展開を進め,最終的なモデルの作成でイメージを確認し,全体の評価のなかでデザインの決定がなされる.アイデアを出していく段階から最終的な確認段階の間には,スケッチやレタリングといった2次元表現,完成品に近いダミーモデルの作成,コンピュータグラフィクスを用いた3次元表示が用いられている.この過程の中で,2次元表現ではリアリティーに欠けるといった問題やダミーモデル作成では手間がかかりコストも高くついてしまうという問題があるためコンピュータグラフィクスを用いた3次元表示は非常に有用である.

コンピュータグラフィクスを用いてパッケージデザイン開発を行っている例としては,凸版印刷株式会社の「簡易3DCGデザインシステム(FORMIT/フォルムイット)」が挙げられる.このシステムでは,パッケージ平面デザインをパッケージ形状データに貼り込み,立体にしたときのデザインイメージを確認することが可能である.しかし,パッケージ形状はあらかじめ決められたものだけであり,独自に作成した形状に対してデザインを貼り付けるといったことはできない.

そこで本研究では,利用者が様々な形状のパッケージを簡単に作成でき,そのパッケージに対してラベルを貼り付けることが可能なパッケージデザイン開発の支援となるシステムを作成することを目的とする.本システムでは,作成したいパッケージ形状の断面図を利用者にマウスクリックで指定してもらい断面図を描画し,それを元に3次元表示を行う.また,テクスチャマッピングを行いパッケージの表面にラベルを貼ることができるようにした.このことにより,実物に近いパッケージデザインを簡単に表示できるようになり,パッケージデザイン開発の支援システムとして十分有用なものとなりうると思われる.

しかし,横断面が同形状ものしか描けないということや描画可能な曲線の種類が少ないということから,精密な描画は難しいためリアリティを追及したデザインの表示には必ずしも十分ではない.今後,様々な形状に対応できるよう改良を加えていく必要があると思われる.