3次元CGによる子供向け中国の歴史的建造物の学習支援システム

 

邵 征

 

近年、コンピュータを取り入れる小学校が増えてきている。学校にコンピュータ授業を設け、子供達に実際にコンピュータを触らせながら、興味を持たせることが1つの目的である。またコンピュータを通じて、何か学習ができて、小学生にとって遊具みたいなコンピュータを早期知的教育としての道具にすれば、より効果的に学習ができると考えられている。

本研究ではコンピュータを用いて、子供に中国の歴史を勉強させるシステムを作ることを考えた。そのため、強い歴史的色彩を持つ建造物を題材に選び、コンピュータ3次元CGにより、子供向け中国の歴史的建造物の学習支援システムを作成することにした。

本システムは中国の各時代の建造物をCGで作成する。その際、各時代別に用意された建造物の部品を正しく組み合わせることで中国の歴史の学習を支援するというシステムを構築するのが、本来の目的である。利用者に小学生を想定したため、システム操作は全てマウスのクリックやドラッグでできるようにし、操作するためのボタンも文字と絵の両方で表示することにした。しかし、今回は中国の全ての時代を取り上げることは時間的に不可能であるため、第1段階として明王朝に建てられ北京にある典型的な歴史的建造物の1つの「紫禁城」をモデルとすることにした。よって、今回作成するシステムのみでは必ずしも学習支援にはならないが、将来の拡張性を考慮した形でシステムを設計する。

本システムのインターフェースは3つのウインドウで構成することにした。それぞれは組み立て用のアトリエウインドウ、部品ボタンを配置する部品ウインドウと機能ボタンを配置する機能ウインドウである。マウスで部品ウインドウから部品を選び、画面上に表示し、機能ウインドウの機能ボタンを利用して、アトリエウインドウに表示された部品を組み立ていく。その際、正しくない部品を選択すると、エラーメッセージが表示されるシステムになっている。

本システムでの主な問題点としては、まず他の時代を含めた複数の建造物に対応できていないということである。「紫禁城」をモデルにしただけで、歴史的建造物の特徴を抽出するのは困難であるため、これだけでは必ずしも学習支援にはなっていないかもしれない。又、「リアルさが乏しい」ということも挙げられる。テクスチャ・マッピングを多用すると処理に負担がかかり、操作するのに時間がかかり過ぎたり、全く動かなくなったりする問題があるため、今回モデルにテクスチャ指標を与えないことにした。部品作りについては最初、座標を指定する方法で行ったが、それだと作成に手間がかかる。そのため、3Dソフトで部品モデルを描き、汎用フォーマットであるSTL(Stereolithography)ファイルで3D情報を保存し、プログラムで定義したバイナリ形式のファイルへ読み込む方法にした。そうすると、ソフトで作ったモデルの情報をSTL形式に保存し、そのデータを本システムに読み込むことができることにより、簡単にモデルを取り替えることができる。そのため、本システムは「紫禁城」だけでなく、色々な歴史的建造物やインテリア等に幅広く拡張できると考えられる。