商標画像検索システムの構築

大橋 瞳

画像の検索において、従来は画像情報に対して人間が索引付けし、キーワードに基づいて 検索する方法がとられてきた。しかし、それには多大な手間がかかり、かつ、キーワード のみでは十分に画像の情報を表現することができないといった問題があった。現在は、色 の情報を基にした類似画像検索システムは実用化されているが、図形の形状を基に直接画 像を検索する技術はまだ確立されていない。商標は「個性化された一群の商品を他の商品 群から識別する」機能を持つもので、その商品やサービスのブランドイメージを表し、消 費者にそれらについての情報を与え、選択させる際の重要な要素となっている。商標を出 願するには、事前に先行商標の調査を行う必要がある。これは商標を登録するにあたって、 無駄な出願や商標権の侵害を防ぐために不可欠な過程である。現在、特許庁には約38万件 の図形商標が登録されており、その商標の検索システムはキーワードで検索するものであ る。そのシステムを使って類似の商標を検索するためには多大な手間がかかる。そこで、 登録したい商標と類似の商標を、キーワードではなく画像を基に検索することができれば、 経費の節減や人的労力の軽減などの点で非常に有用な技術になると考えた。よって本研究 では、キーワードからではなく直接画像をキーとして類似商標画像を検索することができ るシステムの構築を目的とする。  本システムは杉田の“商標画像の類似検索システム”を基にして、検索精度を上げるこ とに重点を置いた。特に画像の持つ周辺分布特徴量、メッシュ特徴量、ペリフェラル特徴 量に焦点をあて、それらの特徴量が図形のどのような特徴を表し、どのように組み合わせ ることで有効に検索できるかということを実験的に調べた。その結果、杉田のシステムで は偏りがあった類似画像検索の精度を上げることができた。エッジ画像の特徴量は画素数 が少ないため安定した結果が得られないとされていたが、図形の形状を知る上で非常に有 効であることがわかった。それに加えて、色の反転画像、上下左右の反転画像に対しても 検索できるように改善した。また、システムの利便性を考え、ボタン操作により、入力し たキー画像や検索結果画像を表示することができるGUIを作成した。  このシステムを実用化するためにはいくつかの問題点が残っている。まず画像データが 増えてくると、検索の効率が悪くなる。そこで、画像データの冗長な部分を省き、必要な 部分のみをデータベース化することができれば効率を向上できるであろう。また、商標画 像には抽象的で単純な図形が多く、数値だけでは表せない特徴を持つものが多い。よって、 キーワード検索技術と類似画像検索技術を組み合わせることで、より精度の高い商標画像 検索システムが完成すると思われる。

(指導教官 松本 紳)