WWWによる原子配置のデータ提供


土田昌二

物理化学などの研究分野において、原子や分子などのミクロの世界には 原子そのものの構造やそれらが持つ様々な物理量の知識が必要となって くる。これらは物理学辞典等の表から得たり、あるいはそれをもとに各 自が数値計算により求めなければならない。
一方、最近ではインターネットが普及し利用者がますます増えている 中で、より多くの人がより多くの分野の情報を提供をしている。その 中でWWW(World Wide Web)を利用することで、世界 中のあらゆる情報を入手することが可能となり、また逆に我々が情報 の提供者となることもある。特に、WWWで情報を提供することによ り、常に最新のデータを提供でき多くの人に利用してもらえる等の利 点がある。
そこで本研究では物理学、化学などを学んでいる学生や研究者を対象 として、周期律表の各元素に対するデータをインターネットで提供す ることを目的とした。
提供するデータとしては、孤立原子状態での電子配置と各軌道電子の 波動関数、及びポテンシャルや結晶化した場合の結晶構造等である。 当初はこれに加え、結晶状態でのポテンシャルやフェルミ面、バンド 構造等もデータとして提供するつもりであったが、今回は時間的制限 もありそこまでいたらなかった。
波動関数やポテンシャルについては、密度汎関数近似を用いてすべて の元素についてセルフコンシステントな数値計算を行った。また波動 関数や結晶構造については三次元コンピュータグラフィックスを用い て視覚的にわかるように表示することにした。
実際の表示は、WWWのブラウザで見ることができるので、利用者は マウスの操作のみで簡単に情報にアクセスすることができる。最初の ホームページでは周期律表が表示されるので、ここで任意の元素を選 択するとそれに対する項目が出てくるので、必要な情報を選ぶことに なる。
波動関数のグラフ表示は、数値計算して得られた結果をコンピュータ グラフィックス化して、画像ファイルとして保存しているが、別の方 法としては選択された時点で計算をし、それをグラフ表示するという ことも考えられる。この場合だとファイル容量を少なくすることがで きるが、一方ではアクセス時間を費やしてしまうという欠点もある。 そこで本研究では前者の方法を採用した。そのために、全体のファイ ル容量が大きくなってしまった。