待ち行列理論を用いた交通渋滞シミュレーション


西川 善高

現代社会において、自動車は我々の生活に密着したものであり、その数は年々増加しつつある。 そして、自動車の数が増加するにともない、様々な問題が発生するが、その一つに「渋滞」とい う問題がある。この渋滞という問題は、道路と道路の交わる交差点や合流地点などで頻繁に発生 しており、その原因としては、それらが設計された当時と現代では交通量が異なるということが 考えられる。もちろんその建設にあたり、ある程度の予測をふまえて設計したのではあろうが、 現代ではその予測を裏切られているような場合もあり、今さら設計の変更をしようにも決して容 易なことではなく、仮に変更されたとしても十数年あるいは数十年の単位で見直されるのみであ る。
ところで、このような交差点や合流地点を設計するにあたり行われる予測の手法の一つとして、 「待ち行列理論」がある。この理論は我々の日常生活における何気無い待ち行列から、待ち行列 とは縁遠いようなものまで、様々な問題の解析に用いられている。しかし、この待ち行列理論で 得られた数値は、多くは日常生活に密着したような問題について表現しているにもかかわらず、 決して簡単なものではないので、誰もが容易に理解できるとは言えない。 そこで本研究では片側2車線の2本の道路が交差する交差点に着目し、「交通量」や「信号間 隔」の違いによる渋滞状況の変化を待ち行列理論で得られた数値を基に、視覚的に観察でき、交 差点の設計や信号間隔の最適化等に利用できるようなシミュレーションシステムを構築した。ま た、システムの視覚化部分ではOpenGLを用いて、3次元コンピュータグラフィックスにより 交差点での状況を表示させた。
このシミュレーションシステムでは、従来の多くの待ち行列理論が対象としていた「未飽和状 態の待ち行列」だけでなく、「過飽和状態の待ち行列」についても独自の解析と見解を加え、さ らに交通量や信号間隔を車線毎に変えることにより、渋滞状況の違いを一度に観察できる。 しかし、渋滞という問題は交通量や信号間隔以外の他の要因や、複数の交差点が関係して発生 する場合もあり、そのような要因を含む渋滞はシミュレートできない。また、現段階では交差点 に進入する自動車は全て直進車のみという仮定に基づきシミュレートしているため、左折車や特 に右折車の多い交差点には、必ずしも正確に適用できるわけではない。 従って、さらに広範囲な「渋滞」という問題についてシミュレートするためには、様々な条件 を組み合わせたり、左折・右折車を含めた交通量を任意の割合で設定できる機能を加える必要が ある。