AR指向のテレビゲームシステムの構築


清野 信子

 近年テレビゲームの普及は著しく、ゲームはもはや子供のためのおもちゃと は呼べなくなっている。それ程までにゲームが普及した背景には、ゲームソフ トの多様化ということが挙げられる。特にシミュレーションゲームは社会のあ らゆる現象をシミュレートしていると言っていいほど、多数のジャンルを持っ ている。またゲーム機の演算性能も向上し、よりリアルな背景を持つものも多 数出てきた。しかしその背景の多くは、ゲーム制作者によってあらかじめ創り 出された空間であり、ゲームを利用する人ごとに背景を変えるということがで きない。そこで利用者自身が身近な環境を背景として取り込むことができれば、 より現実感が感じられるようになるのではないかと考えた。
 本研究では、利用者が簡単に任意の地図作成や保存ができ、それを3次元C G化し、利用者にとって現実感の感じられる空間を背景として用いることがで きるゲームシステムを構築することを目的とした。
 本システムは2次元マップシステムと3次元ARシステムから構成されてい る。(ARとは人工現実感のことである。)利用対象をローマ字が読める小学 校4〜5年生としたため、マウスを使うだけで簡単に利用できるようにした。 2次元マップシステムでは、縦×横=80×40のメッシュの範囲で、地図を 自由に作成することができる。また、作成した地図は3種類までファイルに保 存することができる。一方3次元ARシステムは、2次元マップシステムで作 成した町の中でランダムに移動する目標物を捕まえるゲームである。目標物が 画面上のすべての道の上を移動すれば、利用者の負けになる。その前に目標物 を捕まえることができれば、利用者の勝ちである。画面の右上には地図が表示 されており、スタート・自分・目標物のそれぞれの位置が分かるようになって いる。自分と目標物の位置が重なった場合、目標物を捕まえたとみなされる。  本システムの位置付けは、できるだけ物理的な世界に近づけた非物理的な世 界を対象としているが、今の段階では他の人工現実感を目指したシステムに比 べて、必ずしも満足のいくものとはなっていない。理想的な人工現実感をもつ システムに少しでも近づけるためには、臨場感をもっと高める必要がある。そ のためには、道の高低さや、任意の角度の曲がり道が表現できるようにするべ きである。また、描画できる建物を増やすこと、背景としての空間と現実世界 の縮尺を一定に保つことも必要である。また、表示速度にも問題があるが、こ の点については今後、マシン性能の向上によって改善されると考えられる。小 学生を対象としたシステムであることを考慮すると、使いやすさを向上させる ためには、画面上にヘルプのような機能も盛り込む必要があったと考えられる が、それは今後の課題である。