VRMLによる仮想図書館の構築


田中 千穂

近年インターネットを介して、インターネットバンキング、書籍の検索・注文、 郵便物の配達状況調査、宅配荷物の追跡サービス、JRでは空席案内・予約など 様々なサービスを受けることができるようになった。インターネットを利用す れば、いつでもどこからでも、だれでもサービスを受けることができるという 利点があるからであろう。図書館もその中の一つであり、インターネット上で OPAC検索を行うことができる図書館が増加している。また国立国会図書館では 平成14年度開館を予定している国立国会図書館関西館に、電子図書館事業を 展開する準備を行なっている。他にも様々な機関で『電子図書館』に関する研 究が行われている。
これらの『電子図書館』の多くは書誌事項などにより適合文献を探すという方 式である。しかし図書館の利用方法、図書を探す方法はこれだけであろうか。 図書館内を漠然とした読書要求を持ち、書架に配架されている図書の背表紙を 眺めながら歩いていると、興味をそそられる図書を発見する。このように曖昧 な読書要求をもって、図書館を利用し、偶然興味ある図書を見つける、という ような図書へのアクセス方法が電子図書館にもあって良いのではないか。その ためにはリアリティのあふれる図書、書架や図書館を歩いているような感覚を 作り出すことのできる臨場感あふれる空間を作り出さなければならない。マシ ン環境に依存せず、HTMLでホームページを公開するのと同じように動きのある インタラクティブな3次元空間をインターネット上に公開することができる技 術にVRML(Virtual Reality Modeling Language)がある。VRMLでは3次元空間 中の視点の位置をマウス操作などにより自由に変更することができるので、利 用者は空間を自由に移動しているという感覚を持つことができる。マウス操作 という手軽な操作でバーチャルリアリティを体験することができるのである。 そこで本研究では漠然とした読書要求を抱いた図書館利用者が楽しみながら読 みたい図書を見つけることのできる、ブラウジング支援ツール的な要素を持つ 仮想図書館システムをVRMLによりインターネット上に構築した。
図書はその大きさ、厚さ、カバーの色を反映させた3次元CGで表示され、プロ グラムにより所定の本棚に配架される。配架方法はNDC、著者名順が用意され ており、利用者の好みに合わせて選択できるようになっている。多くのVRML、 HTMLファイルはJavaScript、CGI、Cなどにより必要なときにインタラクティ ブに生成されるようにした。
本システムにはコンピュータの処理速度、著作権上の問題から全文をインター ネット上で読むことができないなどの問題はあるが、来館困難な人などへの利 用者層の拡大、配架ミスの防止、蔵書スペース問題の解消、貸し出し中の図書 もCGにより書架に配架させておくことができるなど、多くの利点が考えられる。 今後、仮想図書館を現実に運営していくために、既存のデータベースを本研究 で構築した仮想図書館に取り込むためのシステム拡張が望まれる。