メロディーからみたヒット曲の特徴分析

久保 和之


 近年、週休2日制が定着し、個人の余暇に対する利用方法も多種多様に なってきた。そのような中で、今までは楽器を演奏できる人のみの特権で あった作曲についても、コンピュータを利用することで誰でも比較的容易 に行えるようになり、余暇に作曲を楽しむという人も増えてきている。こ のことは情報化社会への移行と低価格パソコンの登場などにより、一般家 庭にパーソナル・コンピュータが急激に普及しつつあることにも一因があ る。つまり、DTM(DeskTop Music)さえ導入すれば、すぐにでも作曲がで きる環境が一般にも普及してきているといえる。DTMとはコンピュータ・ ミュージックの中でも、特に家庭向け、個人向けの小規模なシステムのこ とで、DTMを用いれば楽器を演奏できなくても手軽に本格的な作曲、演奏が できる。ところが、誰でもすぐに素晴らしい曲を作ることができるかとい えば、それは当然無理である。作曲の本を勉強したとしても、それは一般 的な説明が中心で、必ずしもよい曲を作るために、すぐに役立つというも のでもない。よい曲の要素の1つに美しいメロディーラインがあげられる が、どのようにすれば美しいメロディーが作られるかは、作曲の本などで 説明できるようなことではないからである。そこで、本研究では逆にヒッ ト曲をもとにデータを採取し、統計的な手法を用いてそれらに共通の何か が存在するかどうかを分析することにした。共通の何かがわかれば実際の 作曲に役立つと思われる。
 音楽にはメロディー・リズム・ハーモニー(和音、つまりコード)の3 大要素がある。このうちコードに関する分析は多数存在するため、本研究 ではメロディーを扱うことにした。まず、よく使われるメロディーを統計 的に探し出す。よく使われるメロディーを作曲時に用いることで、手軽に よい曲が作れるものと思われる。このデータをそのまま利用することは盗 作といえるわけだが、本システムの利用対象が初心者であることを考えれ ば、上級者の模倣をするという方法は上達を早める良い手段ではないかと 思われる。また、音の高さと長さを別々にし、それぞれよく使われるもの がないかを統計的に探し出すようにもなっている。これらを組み合わせて メロディーを作ることにより、全く同じメロディーとなるのを防ぐことが できるだろう。また、音符数やメロディーの激しさ、主音などに注目した データや調、テンポ、リズムパターンなどの統計もとっているので、これ らの特徴も作曲に応用することが可能である。本システムは分析結果をホ ームページなどで公開し、利用するという形をとっている。
 本システムはメロディーのみに焦点を当て、コードの方には触れていな い。コードは音楽の3大要素のうちのひとつであり、メロディーとも密接 な関係がある。これらをリンクしてデータをとるようにすれば、さらに有 用なデータになると思われるが、それは今後の課題である。