自動DRAWツールの構築

清水千香子


  現在、インターネットが急速に一般の人々にも普及している。いまや、 各家庭にパソコンがあるのも珍しくない。それに伴って、パッケージ ソフトウェア各社は、次々に新しいパッケージソフトウェアを開発し、 他社の同様なパッケージソフトウェアに負けぬ様、改良を重ね、次々に アップグレード版を発表している。また、インターネット上では無料で 配布しているソフト等も少なくない。このおかげで、今では、パソコン が普及していなかった時では考えられないほど便利になった分野も多い。 「図形を描く」と言う事を考えてみても例外ではない。パソコンが普及 する以前は、大抵の人は自らの手でペン、定規、コンパスなどを用いて、 紙や布など何らかの媒体に描いていた。しかし、現在はパソコンが普及し、 「図形描画ツール」が多数登場している。この「図形描画ツール」の登場 により、ペンではなくマウスを利用して、パソコンのウィンドウ上に描く ことが可能になり、描く手段、媒体は変化した。しかし、図形を描きたい 人が自らの手を動かし、視覚的に描きたい図形を表現すると言う点では、 「図形描画ツール」の登場でも、パソコン普及以前と何ら変わらない。 また、「図形描画ツール」にしても、機能が多くあるために、かえって 操作性がより複雑になってきてしまい、これらを使いこなすまでには至 ってない人も決して少なくないと思われる。
そこで、本研究では、誰でも容易に描きたい図形を文章で入力し、ツール がそれを理解し、図形を描画する「自動DRAWツール」の構築を目的とした。 本研究では自然言語的な文章入力による方法を試みている。文章で描きたい 図形を入力するのでその図形をあらわす正確な情報が必要となる。よって、 描きたい図形の正確な情報は入力文章中で指定しなくてはいけない。この情 報を元に図形を描く事になるが、描画以外にも図形の消去、図形の移動、図 形の修正等の機能も付加する事を目的とした。しかし、現段階では描く事が 可能な図形が限られている事、入力文章に対して必ずしも完全に描けない場 合がある等「図形描画ツール」としての実用性まだ低いと思われる。 本ツールを構築する際に使用した言語はC言語と3次元コンピュータグラフィ ックスの標準的なライブラリであるOpenGL互換のライブラリMesaを使用した。 これは、本研究での図形は現在は2次元に限られているが、将来的には3次元 の図形を描く事も考慮に入れての事である。また、本ツールをインターネット 上で無料で配布する場合を想定し、本ツールをダウンロードして手に入れ、 同時に、インターネット上で無料で配布されているMesaをダウンロードしても らえば、簡単に本ツールが使用可能となる。また、将来的には音声認識ソフト を組み合わせ、音声による入力を想定している。音声認識ソフトと組み合わせ る事で、文章入力を行わなくても、図形を描けるようになり、パソコンの操作 が複雑でドローツール使いこなせなかったユーザも、文章を発する感覚で図形 を描く事がより容易に出来るようになる。また、体が不自由な人は、自らの手 を動かして図形を描く事や、マウスを使い図形を描く既存のドローツールの利 用も困難であるために、図形を描くと言う作業は容易でなかった。文章入力の 操作がなくなる事で、このような人達も本ツールを操作できるようになると考 えられる。