OpenGLによる平安京モデルの作成

田中幸子


 私たちは「平安京」について、平面図や再現模型などの資料を見ることによって 知ることができる。しかし、平面図では作成者が意図した定まった方向からの視点 でしか見ることができない。また,再現模型では実際の大きさを知ることができな い、等々、これらの資料からは「平安京」の広さや雰囲気を知るには不十分である。 やはり、実物を見て、その中を歩くことこそ最良の方法である。しかし、過去へは 戻れないので、計算機を用い仮想空間上に平安京モデルを作成し、その中を歩くこ とによって「平安京」の広さや雰囲気を体感できないかと考えた。このようなシス テムを作ろうと考えた場合、実世界に近づけるためウォークスルー機能は直感的な 操作でなされなければならない。また、新たな情報が増えたり、今までの情報が誤 ったものであるとわかった場合など地図データに修正が必要であったときに、管理 者が簡単に更新できる必要がある。
 本研究では、歴史や「平安京」に興味をもっている一般の人が、資料でしか知る ことのできない「平安京」の3次元モデルの中を簡単な操作で歩くことによって、 よりよく知り、楽しめるシステムを仮想空間上に構築し、また、道・建物の配置の 修正が簡易にできるシステムの構築を目的とした。
 本研究で作成したシステムは、地図データの管理を行う2次元管理システムと、 平安京モデルの中を歩く3次元ウォークスルーシステムの2つから構成される。2次 元管理システムウィンドウで管理者がマウス操作により、平安京の平面図に建物な どのアイコンを配置・修正し、それをデータファイルとして保存する。データの修 正がいらないときは、このシステムを呼び出す必要はない。データファイルを読み こんだ3次元ウォークスルーシステムウィンドウでは、2次元管理システムウィンド ウで配置したアイコンに対応した物体が3次元モデルとして仮想空間上に描画される。 利用者はマウス操作により、この平安京モデルの中を自由に移動することができる ようになっている。以上のシステムは、グラフィックスライブラリとしてOpenGL、 言語はCを用いて構築されているので、OpenGLとGLUT、Cコンパイラがあれば、どの 環境でも動作する。
 本システムとしての一番の問題点は「現実感に乏しい」ことである。作成目的で ある平安京の雰囲気を知るという点では、必ずしも成功とは言えない。この点を改 善する有効な手段として、テクスチャ・マッピングがある。物体の表面にテクスチ ャを張ることで、よりリアリティに表現することが可能となるが、テクスチャは多 用すると処理に負担がかかり、ウォークスルーの面でスムーズな動きができなくな ってしまう。テクスチャ処理を含めたレンダリングが高速にできる高性能な計算機 を用い、なおかつ、物体に衝突判定を付加することにより、よりリアリティのある 平安京モデルが構築できると考えられる。また、システムはそのままで、建物オブ ジェクトを変えるなどすれば、平安京だけではなく平城京、または、現代の地図に も応用できるであろう。