OpenGLによる舞台照明のシミュレーション

土屋 奈子


 芸能等の娯楽が身近になって久しい現在、誰しも一度位は自身が舞台に関わ った事があるだろう。そのために、東京だけでもホール(劇場)と名のつく所 は数百は存在しているものと思われ、また都道府県は言うに及ばず、現在では 市町村レベルでも多目的ホールを持ち、市民に開放している地方公共団体も多 い。そうした施設には必ず大規模な照明設備が用意されている。更に、今では 学校やその他公共施設などでもこうした機器を利用する機会も多いだろう。し かし設備ばかりが整備されても、その技術は専門性が高く一般の人が使いこな す事は難しい。その一方で、例えばアマチュアや高校の演劇部などの地域住民 による催し物で、そのような専門知識のない人がホールを利用する機会が増え ている。そこで、専門知識のない人でも設備を簡単にシミュレートできるシス テムが身近にあれば、より質の高い舞台演出等が可能になると考えた。
 本システムでは、舞台装置のうち照明に焦点をあてている。舞台照明は演出 の一部であるため、実際にはその他の舞台装置との関わりにおいてプランは決 定されるのであるが、一般の人が舞台装置のなかで最も関わりが薄いのがこの 分野であろう。
 そこで、本システムでは照明に関する知識のない人でも簡単に操作できるよ うに、あらかじめ舞台に用意されたライトをマウスで点灯していき、その舞台 内容にふさわしいと思われる位置に設置していく。ライトに付加した番号を選 択することで、その番号の照明の方向、色彩等を制御できるようにしてある。 メインウィンドウが切り替わる事はないので、操作の結果を見ながらプランを 考えることができるようにした。
 しかし、より簡単に操作できるシステムを目指した結果、本システムで用意 したライトや機能は、現実の舞台照明に比べ貧弱なものとなってしまった。そ のため本システムでは、実際の舞台照明を完全にシミュレートするまでには至 っていない。
 今後の発展としては、舞台照明に関するより詳しい知識を元に、より現実感 のある機器や舞台を再現し、大規模な制御ができるようになれば、充分利用可 能なものになるだろう。