図情メディア研究科パンフレット2015
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09学位論文(2014年度修了)かを示唆する知見として役立つ。また、人物推薦アルゴリズムで用いる尺度については、形状類似スコアの有効性はユーザの関心の広がりと関連があることが分かった。(研究指導担当教員 佐藤 哲司) ソーシャル・デジタルライブラリにおける日本十進分類法を用いた人物推薦手法常川真央 デジタルライブラリはユーザが属するコミュニティの社会的文脈を反映し、新たな社会的相互作用を生み出す媒介物として機能すると様々な図書館情報学者から指摘され、協調的な知識コミュニティとしての側面の研究や概念モデルの提示も行われてきている。特に、2008年以降、書評投稿機能やSNS機能を提供することで、利用者間のコミュニケーションを支援するソーシャル・デジタルライブラリが登場している。このように現実のデジタルライブラリの開発の中では、ユーザのコミュニティ形成の支援が重要視されている。 しかし、そもそもコミュニティ形成を支援する機能の実装手法として何が適切であるか、ユーザ間の社会的相互作用を生み出す媒介物には何が適切かは、未だ具体的に検討されていない。 本研究では、コミュニティ形成を支援する技術としてSNSの研究で研究されている「人物推薦システム」に着目し、ソーシャル・デジタルライブラリにおける人物推薦手法を提案し、検証することを通じて、ユーザ間の社会的相互作用を生み出す媒介物について考察する。 本研究の提案は、ユーザの趣味嗜好を読書履歴から推測する技術である"NDCツリープロファイリング"と、ユーザ同士のプロファイルを比較して読書傾向の類似したユーザを推薦する人物推薦アルゴリズムによって構成されている。 NDCツリープロファイリングでは、デジタルライブラリに登録されているユーザの資料利用履歴から、書籍の分類法の一種である日本十進分類法(以下、NDC)の分類番号を抽出・集計し、木構造データとして類型化することでユーザプロファイルを作成する。 人物推薦アルゴリズムの提案では、ユーザプロファイル同士の類似性を測るために、形状類似スコアと共通ラベルスコアの2種類の尺度を提案する。さらに、2つの尺度を補完する尺度としてコメント率を提案する。そのうえで、人物推薦を実現するための推薦スコア算出アルゴリズムNDCTREE1を提案する。さらに、提案アルゴリズムの有効性を検証するために、利用者実験を行い、その結果から得た知見をもとに改良したアルゴリズムNDCTREE2を提案する。 本研究では、提案手法の有効性を示すNDCTREE2利用者実験を行った。その結果、NDCツリープロファイリングを用いた人物推薦手法は人物推薦として意義のある手法であることが明らかになった。さらに、本研究の評価の範囲では、ユーザ間の関心の類似度を測るには、階層的な主題が適切であることが分かった。このことは、ソーシャル・デジタルライブラリにおけるユーザ間のコミュニケーションを促進するような媒介物が具体的に何博士(図書館情報学)学位論文(2014年度修了)

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