図情メディア研究科パンフレット2015
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49研究科の活動百万塔及び自心印陀羅尼 百万塔陀羅尼は日本における現存最古の印刷物です。『続日本紀』などによれば、奈良時代に藤原仲麻呂の乱が平定された(764年)後、称徳天皇の発願によって小さな三重の木製塔が百万基つくられ、それぞれに無垢浄光大陀羅尼経のうち、根本、相輪、自心印、六度のいずれかの陀羅尼(呪文)が納められ、法隆寺などの諸寺に寄進されました(770年)(所蔵は自心印陀羅尼。[図1])。このとき奉納された印刷物が百万塔陀羅尼と通称されるものです。使用された紙は麻や楮から作られたものです。書誌学などの研究成果によれば、印刷方法は木版あるいは銅版によるという二つの説があります。日本における現存最古の印刷物が仏教と深いかかわりをもって製作されたことは、当時の社会や文化とあわせて考える必要があります。グーテンベルク42行聖書零葉 グーテンベルク(Johannes Gutenberg, 1400頃-1468)は15世紀半ばに金属活字による活版印刷術を開発しました。『42行聖書』はグーテンベルクがドイツのマインツで印刷したとされる聖書であり、2段組みで1段がおもに42行となっています。『42行聖書』にはヴェラム(羊皮紙)に印刷されたものと、手漉き紙に印刷されたものがあり、図書館情報学図書館には手漉き紙を使用した零葉(一葉)があります[図2]。内容は旧約聖書の「エゼキエル書」の一部です。 グーテンベルクによって発明された機械的印刷は、その後ヨーロッパで急速に広まり、書物の大量生産を可能にしました。というのも、ヨーロッパ中世の写本は人手によって書き写すことで生産されていたからです。近世以降、豊富なコレクションを所蔵する大規模な図書館が西欧でつくられてきた背景にはこうした書物の大量生産がありました。欧米ではグーテンベルクによる活版印刷術の発明が社会や文化に及ぼした影響についても研究されています。図書館情報学図書館の貴重資料と大型コレクションアメリカ図書館学・書誌学基本文献集 「本についての本」を収集したコレクションで、図書館の管理運営一般や図書館利用法、図書館の歴史、書誌学の基本図書はもちろん、読書論、図書印刷技術の歴史、装丁とその歴史、活字の開発史、原始・古代の印刷、古書・稀覯書の蒐集、手書き本、バイブル印刷史、ブック・イラストレーション、銅版画の歴史、新聞の歴史、著名な図書館創立者の伝記、絵本の歴史をはじめ、アンダーグラウンド出版物の歴史や日本の浮世絵のフランス印刷技術への影響を考察しためずらしいものなども含め、図書館学、書誌学の広い範囲をカバーするものです。ロシア・ソ連書誌図書館学資料集成 古代より現代に至るロシア・ソ連において生みだされたあらゆる写本・古版本、活字印写本、自筆文書に関する書誌、科学アカデミー・大学・政府機関・国会・神学校・修道院・宗教会議・博物館など公的図書館および貴族愛書家個人の蔵書目録、出版社・古書店・有力書店の図書目録、書物史・印刷史・書物取引・図書館学史など、およそ出版物に関する図書・雑誌・逐次刊行物の一大集成で、IDC社(International Documentation Co.)のマイクロフィッシュ版です。“Encyclopedie methodique, ou, par ordre de matieres” Chez Panckoucke(パンクック「系統的百科全書」) フランスの『百科全書』補遺の出版元としても知られるパンクック(Charles Joseph Panckoucke, 1736-1798)が企画した百科事典コレクション(全200冊)です。主題別配列を特色とし、娘の代になって漸く完成した大事業でした。図2.  42行聖書零葉 図1.  自心印陀羅尼

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