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オイラーやルンゲクッタなどでは,求めたいステップでの値(例えば)のために それ以前の値(など)だけを空間微分項に用いていた. このため,前のステップでの値が既知であれば,単に式にその値を代入するだけで計算が可能であった. これに対し,を時間微分項以外に用いる方法を陰解法と呼ぶ.
時間微分以外にがない場合を完全陰解法と呼ぶ. 移流方程式の完全陰解法による差分式(前進オイラー+風上差分)は,
一つの式に未知数が2つ()含まれており,陽解法のように単純に代入だけでは解けない. そのため,すべてのに関する式を連立させて解く(連立方程式). 流体シミュレーションではほとんどの場合,線形連立方程式(線形システム)となる. つまり,上記の式をすべてのに関して立てることで,
という行列方程式を得る.そしてこれを逆行列計算により解く.
数値流体解析ではこの行列が巨大になってしまい,計算コストが大きくなる. 例えば,3次元空間をのグリッドで分割した場合,の行列となってしまう. ただし,は正定対称疎行列であることが多く,前処理付共役勾配法など効率的な解法を使うことができる. それでも,やはり陽解法に比べると圧倒的に計算時間が必要である. 一方で陰解法は数値的に安定しており,大きなタイムステップでも発散することなしに解ける(CFL条件にも左右されない)ため,CG用アプリケーションなどではよく用いられている.